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東京地方裁判所 昭和47年(ワ)11157号 判決

理由

一  請求原因事実は、当事者間に争いがない。

二  被告は、原告らが会員証等の引換手続に応じなかつたから、会員資格を喪失した旨主張するから検討する。

被告が昭和四一年六月五日紺文から成田国際カントリークラブの経営権を譲り受けたことは当事者間に争いがなく、《証拠》によると、被告は、右経営権の譲り受けたのちである同年七月紺文当時の前記クラブの会員に対しその事実を通知するとともに、同年八月会員権を再確認し、管理を厳正にするため被告の会員証とメンバーカードを新たに発行し、紺文当時のものと引き換えることを企図し、引換期間を同年九月一日から一一月三〇日までと定めて、各会員に普通郵便で通知したこと、前記引換期間中に会員のうち七割位のものは引換を了したが、残りの会員は引換に応じなかつたので、昭和四三年一月再度期間を定めて引換方を普通郵便で催告したが、その催告にさいして引換に応じなければ、預つている書類を返戻する旨を記載したが、引き換しない場合には会員資格を失つたり、脱会の意思があると認めるというような文言の記載はないこと、被告は、昭和四四年中は、引換期間経過後の引換に応じていたが、昭和四五年五月八日開催された成田国際カントリークラブの理事会(被告の役員および被告の推薦する会員で構成される)で未引換会員は海外出張中、病気療養中、特殊な事情のあるものを除き除名にする旨決議をしたこと、被告は右理事会決議後は未引換会員はその資格を失つたとして取り扱つていることが認められる。

右事実によると、被告は、紺文から成田国際カントリークラブの営業権を譲り受けるとともに、紺文と右クラブの会員との間の権利義務の一切を承継したのであるから、多数会員の存在するゴルフ場の経営の円滑と厳正を期するため、会員証およびメンバーカードの引換を求めることは、それなりに、合理的な理由があつたということができるが、それは、被告の側の便宜の問題であり、未引換会員がゴルフ場において会員であることを証明することが困難となり、事実上プレイをするのに支障を生ずることはともかく、すでに被告と法律上の権利関係の生じている会員の地位が、被告の要請に基づく引換に応じなかつたからといつて、当然に消滅すると解することはできない。また、成田国際カントリークラブの理事会において未引換会員を除名する旨の決議をしたことは前記認定のとおりであるが、被告は右理事会がこのような未引換会員に対し除名すべき権限を有することを主張していないから、右決議の存在も右の結論を左右しない。

そうすると、被告の原告らが会員証等の引き換えをしなかつたから会員資格を失つたという抗弁は理由がない。

三  被告は原告らは期間の満了によつて会員資格を失つたと主張し、証人鈴木清一の証言のなかには、この主張にそうよう供述する部分もあるけれども、右証言部分は成立に争いのない甲第一号証と同証言によつて真正に成立したと認める乙第四号証および同証言のその他の部分と対比すると措信することができないし、他に会員たる地位に期限が付せられていたことを認めるに足りる証拠はないから、この点の被告の抗弁も理由がない。

四  被告は、原告らが除名事由に該当する年会費を滞納している旨抗弁するけれども、原告らにつき規約に基づく除名決議をしたことを主張しないのであるから、右抗弁は、主張自体失当である。

五  そうすると、原告らは、成田国際カントリークラブの個人正会員である地位を有するというべきであり、被告が現にその地位を争つていることは被告の自認するところであるから、原告らのその地位にあることの確認を求める本訴請求は理由があり、

(裁判官 井関浩)

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